Caipiroska *2
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ー カラン、コロン
「いらっしゃいま… おっ、哲人!ひさしぶり!」
「どうも…」
「元気ないなぁ。ま、今日は絶対来ると思っててんけどな。ふふっ」
マスターはいつもと変わらない笑顔で、あたたかく迎えてくれた。
「はい、おつかれ。今日ここでもええ?」
「平気っす。いつもありがとうございます!」
「こちらこそ」
おしぼりと、サービスの生ビール。
店内には俺とマスターのふたりきりだったが、いつも座る席には、飲みかけのグラスと黒いコートが置かれていた。
(そこに座るってことは、マスターの知り合いとかかな…)
そんなことを考えながら、きんと冷えたビールを勢いよく喉に流し込んだ。