Caipiroska *3
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しばらくして、ドアベルが勢いよく鳴った。
「マスター、話の途中にごめんなー」
すらりと背の高い人が、騒々しく入ってきた。
「おー、おかえりー」
「こんな時間に、劇団から電話で…って、お客さんいらしてたんや…」
すみません、と俺の方にぺこりと頭を下げ、カウンターの端席に座る。
ああ、彼が黒いコートの持ち主か。
第一印象は、端正な顔立ちのとても美しい人だった。
「哲人、うるさくてごめんな。こいつ舞台やってるから、無駄に声おっきくて。な?」
「ちょ、マスター。無駄には余計やろ!」
クールビューティーな外見とは反対に、彼はがははと豪快に笑った。