Caipiroska *4
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不思議な気持ちだ。
今日初めて出会ったのに、まるで昔から知り合いだったかのような。
彼は、鳳翔大さん と言った。
なんでも、この辺りの劇団で役者をしているそうだ。
人懐こい笑顔で、次から次へと話題をふってくれる。
「へー、山田くんて野球選手なんや!すごいな!」
「あのな大ちゃん、いまどき"山田哲人"知らんとかあかんで?」
「え、うそやん!あんまりテレビ見いひんから、そういうの疎いねんもん。山田くん、ほんまごめんな」
「いいっすよ。逆に新鮮っす!」
「「めっちゃええ子やー」」
ふたりの見事なシンクロ具合に、俺は思わず声をあげて笑ってしまった。
「ふふ、やーっと哲人の笑顔がみれたな」
マスターがほっとしたように言う。
ちゃんと気持ちを切り替えたつもりだったが、自分でも気づかぬうちに面に出てしまっていたようだ…
「マ、マスター!いつもいつも心配かけてすんません。
でも俺、次こそがんばりますから!
ホームランでもヒットでも打ってやります!」
「…おい、哲人!お前のことは応援してるけどな、阪神戦では打ったらあかん!!」
そう、マスターは根っからの阪神ファンだった。